映画『不思議の国でアリスと —Dive In Wonderland—』は、P.A.WORKSオリジナルの映画です。
タイトルの通り、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を題材にした作品ですが、
現代日本で就活中の大学生りせが、ひょんなことから不思議の国に入り込んでしまい、そこで出会ったアリスと共に冒険を繰り広げる、というちょっと変わったストーリー。
これは、原作…というか原案になった『不思議の国のアリス』や『鏡の国のアリス』を履修する必要があるのでしょうか。
また、あまりにも有名な童話と現代要素のミックスは、かなりセンスが問われます。
脚本もキャラクターも演出も演技も良くなければ成立しませんが……さて、実際に見た人たちの感想はどうなのでしょうか。
映画『不思議の国でアリスと』は原作履修必要?

映画『不思議の国でアリスと』は、オリジナル作品。
原案となった『不思議の国のアリス』及び『鏡の国のアリス』の履修は、必要ありません!
あくまでも『不思議の国のアリス』をモチーフにしているだけで、主人公も現代の大学生ですし、不思議の国の設定や登場キャラクターもかなりオリジナルに作り替えられているからです。
もちろん、原作『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』を知っていれば、その差異を比べて「そうくるか」とニヤリとできる要素がたくさんあるので、履修して損はありません。
逆に映画『不思議の国でアリスと』を見て興味が沸き、『不思議の国のアリス』を買ってちゃんと読んだ、という人もいます。
順番はどちらからでもいいので、是非、両方を堪能してみてほしいと思います。
コミカライズ
映画『不思議の国でアリスと』は、WEBマンガメディア「コミックNewtype」でコミカライズの連載も始まっています!
気になる方はこちらを読んで判断してみてもいいかもしれませんね。
映画『不思議の国でアリスと』の感想

映画『不思議の国でアリスと』の評判は、おおむね良好のようです。
なにせ、オリジナル作品なので、比べる原作がありませんから、少なくとも原作と見比べての肩透かしがありません。
心配だった、童話のファンタジー要素と現代日本を交えた設定も、主人公をあえてアリスではなく普通の大学生にしたことが良かったのか、批判は少ないようです。
悪い評判

厳しい評判はあまりありませんが、やはり合わない人、パッとしない人もいるようです。
前半が退屈?
不思議の国に入り込んだ主人公りせが、不思議の国の理不尽な世界とキャラクターに振り回される前半は「意味が解らず退屈」と感じる人もいるようです。
しかし、これは仕方が無いかもしれません。
なにせ、原案の『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』事態が、不条理で意味の分からない矢継ぎ早の不思議に延々と振り回され続ける話なので。
原案は本当、読者置いてけぼりでも構わないような、不親切なナンセンス作品ですから……
それを思えば、映画『不思議の国でアリスと』はまだ、その意味不明さにも後から理由を見つけられなくもないのは救いかもしれません。
ターゲット層がわかりにくい
アリスモチーフの人気が幅広過ぎて、どの層をメインターゲットにしているのかはちょっとわかりづらい作品ですね。
童話……のわりには、主人公が就活に臨む大学生ですし、
それじゃあ20前後の若者……をターゲットにするには、その層に好まれそうな(例えば恋愛などの)要素も薄い。
もっと大人向けにするには世界観が幼いですし、少なくともステレオタイプな大衆向けでは無いのかもしれません。
音響がいまいち?
好み、と言ってしまえばそれで終わってしまいますが、音響がいまいち、という声もありました。
昨今のアニメ映画の力の入れようはすさまじく、これでもかこれでもかと訴えかける音響が多いので、その中で目立つのは難しいかもしれません。
もっとも、そんな激しい印象が必要な作品かというと、そうでもないので、難しいですね。
良い評判

モチーフとしては手あかのついてしまったアリスをモチーフにしたオリジナル映画、というのはなかなか勇気があると思いますが、現代日本を絡めたことで現代人の胸を打つ作品に仕上がったようです!
時代を反映したアレンジが上手い!
不思議の国でアリスと振り回されながら、物語はやがて、りせの内面に訴えかける内容になっていきます。
しかし、りせ個人の話というより、現代日本に反映されるようなハッとするものを物語に織り込むのがとてもうまい!
アリスの不思議の世界を現代日本で新解釈することに意味を見出せる作品となっています。
クライマックスのカタルシスが最高!
不思議の国での経験を経て、最後はハートの女王の元で裁判にかけられます。
エピソードの絡め方は原案『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』をちゃんとなぞらえていますね。
『不思議の国のアリス』も終盤はハートの女王の元での裁判で、いきなりアリスが名指しで有罪か無罪かを問われるのです。
しかし、これは『不思議の国のアリス』ではなく、『不思議の国でアリスと』。
裁判の持つ意味が、りせと観客の心に訴えかけます。
リアリティあるセリフや描写が丁寧
ファンタジー作品であるからこそ、ただ不思議要素で振り回すだけでなく、それと対極をなす地に足のついたリアリティ要素も必要です。
むしろ、現実をしっかり描かなければ、ファンタジーが際立ちません。
『不思議の国でアリスと』は、序盤の女子会や、現実に戻ってからの描写に『現代大学生』のリアル感がちゃんと表現されています。
その丁寧な描写が作品の魅力を引き立てている良作です。
映画『不思議の国でアリスと』のまとめ

オリジナルアニメ映画『不思議の国でアリスと —Dive In Wonderland—』。
原案である『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』を履修してなくても十分楽しめる内容です。
不思議の国の意味不明な不可解さなど、退屈に感じる人もいるようですが、
最後まで見ると、そこに至るまでの物語に意味を見出せ、美しい絵と個性的なキャラクター、確かな演技などに引き込まれ、満足感のある内容になっています。
刺さる人には刺さる作品。気になる方は試しに見てみてはどうでしょうか。
あなたにとって、忘れられない物語になるかもしれません。