『TRIGUN STARGAZE』は、アニメ『TRIGUN STAMPEDE』の2期として製作、放映されました。
第一話から衝撃の改変を加え、原作漫画『TRIGUN』を下地にしながら全く別の世界を描いて来た『TRIGUN STARGAZE』。
原作ファンが毎週「全く知らないトライガンだ……」「先が全然読めない……」と困惑していた問題作が、ついにフィナーレを迎えました!
今作『TRIGUN STARGAZE』と前作『TRIGUN STAMPEDE(以下『STAMPEDE』)』とでは違う点もあるようですが、どんなところが違うのでしょう。
結局、『TRIGUN STARGAZE(以下『STARGAZE』)』はつまらなかったのでしょうか、面白かったのでしょうか。
『TRIGUN STARGAZE』と『TRIGUN STAMPEDE』の違い
『STARGAZE』は『STAMPEDE』の3年後に放映され、『STAMPEDE』のクライマックスとなった事件ロストジュライから2年半後が舞台とされるため、普通に考えたら『STAMPEDE』の続編なのですが、
実は、そう考えるとつじつまの合わない箇所や、別作品のように違い過ぎる雰囲気に、多くの視聴者が戸惑いました。
登場予定のキャラクターが割愛された
『STAMPEDE』の最後の数分。原作でも重要なキャラクターが、声や後ろ姿で登場していました。
一人は、「ロストジュライ」後のヴァッシュを匿う少女リィナ。
もう一人は、地球から来るインディペンデンツの一人クロニカです。
『STAMPEDE』の時点で原作からは大きな改変がされており、原作のキャラクターがどの程度登場するのかは原作ファンみなが気になっていたところですが、
思い入れの強い人も多いリィナと、終盤、今までと全く違う視点で切り込んでくるクロニカの登場は、原作ファン皆が「この二人を出してくれるんだ」「よかった」「嬉しい」と喜びました。

しかし。『STARGAZE』が始まってみたら、二人の姿は影も形もありません。
それどころか、リィナの立ち位置は、原作ではヴァッシュに恨みを抱き、復讐のために戦闘技術を身に着けたホッパードが担うという、誰も想像だにしなかった、しかし原作を知る人ならその一文だけで地獄を想像させる事態になっていたのです。
クロニカも、原作でも登場は終盤の方であるため、最終回まで登場を願う声は有りましたが、残念ながら最後まで姿を現しませんでした。
明確に登場を示唆されていたキャラクターを削るだけでなく、他のキャラが代登するという、あまり前例のない事態に「これは『STAMPEDE』から直接つながる話ではないらしい」ことがわかり、大きな混乱を呼びました。
全体的に明るい
最初の2話こそ、原作すら凌駕するほどの苦しみを味わわされた『STAMPEDE』でしたが、
そこを抜けると、今度は拍子抜けするほど事が上手く回っていき、視聴者はまたもや「どういうことなの?」と驚かされていきます。
いや、要所要所に原作とは違う味の苦しみが付加されてはいるのですが、どれもが最終的には救われる方向性に舵を切られていくため、
やがて、原作との改変部分は、最終的にハッピーエンドに持ち込むために必要な強引なまでの軌道修正だったのではないか、という予測が立って行きます。

OPがanoちゃん!?
特に物議をかもしたのが、OP主題歌です。
2022年にデビューし、若年層に人気の若手アーティストanoさんが手がけたOP曲『ピカレスクヒーロー』は、かわいらしい歌声からの本格的なデスボイス、POPで疾走感のあるメロディで、
『STARGAZE』の退廃的で大人な雰囲気とはかなり違い、面食らった人が多くいました。
『TRIGUN』は原作が約30年も前なので、当時からのファンは中年です。
そんなファンも唸る重厚感のあった『STAMPEDE』とのあまりの違いに「ついていけない」「『TRIGUN』にはふさわしくない」とさじを投げてしまう人も出てしまいましたが、
思い切った改変の数々が奇跡的に事態を好転していく『TRIGUN STARGAZE』の強引なポジティブさが実感されていくにつれ「あれ? もしかしてanoさんの『ピカレスクヒーロー』に合う話になっていってない?」という声が増えていくのは面白い変化でした。
原作のネタやセリフの流用が多い
『STAMPEDE』は、原作がありながら原作のお約束なネタやセリフがほとんど出ない「これは『原作』とも『旧アニメ版』とも全く別の作品」というドライな態度が、最終的に独特の美学を感じさせ、見るものを納得させた作品でした。
しかし『STARGAZE』は逆に、隙あらば原作ファンが喜ぶようなネタやセリフの流用が詰め込まれていました。
『STAMPEDE』のあまりのストイックさに「アニメであのセリフ、あのシーンを見たかった」という嘆きもあったため、『STARGAZE』はそれに応えてくれる形となり、喜ぶ人も多くありましたが、
根本的に設定やストーリー自体を大きく変えていることから「取って付けたようで白々しい」「台詞の意味が変わってしまって、軽率に感じる」という意見も出てしまい、ファン心理の難しさを感じました。
『TRIGUN STARGAZE』最終回の評判
物議をかもした『TRIGUN STARGAZE』ですが、やはり、問題は最終回です。
多くの改変も、最終回で納得させられれば成功。
どんなに道中を楽しませてくれても、最終回で大コケしてしまえば台無しです。
問題の最終回の評判は、どうだったのでしょうか。

悪い評判
やはり、多くの改変が最後まで悪い意味で尾を引いて感じられてしまった人もいました。
原作『TRIGUN』は、ファンの心に大きな傷を負わせながらも「この作品を知らずに死なずに済んでよかった」等の激重な言葉が語られるような影響力の強い作品です。
それだけ、読む人の繊細なところに深く刺さる作品なだけに、一筋縄ではいかなかったようです。
キャラクターの解釈違い
原作通りのキャラクターが一人もいない、挑戦的な作品でした。
その理由は、今回のアニメ化で目指す最終回のために必要な改変もあれば、時代に合わせて修正された改変もあり、どれも不必要な改変ではなかったのですが、
『TRIGUN』はキャラクター一人ひとりの美学が美しい作品。
中には全くの別人になってしまったキャラクターもいるため、
それぞれのキャラクターの思い入れのある部分が変わってしまうことに抵抗を感じてしまうのは、仕方が無い面があります。
人気エピソードやネタがほとんど無い
『STAMPEDE』になり、お約束のネタやセリフはだいぶ回収されましたが、そもそも全部で16冊もある作品を12話+12話で収めるのが無理な話です。
その中で収めるために大々的な再構築がなされた結果、多くの印象的なエピソードやネタが排除され、背景もほとんど語られず終わったものも数知れずありました。
心残りの無い人は、誰もいないのかもしれません。

良い評判
しかし、それでも、多くの制限がある中でのこの勇気ある挑戦、現在のアニメ業界の最高水準を維持し続けたのではないかという熱意と姿勢は、原作とは違う物語を見せ、それなのに原作と共通する意思も感じさせてくれました。
でき得る限りのキャラを救うための再編成
『STARGAZE』の半分以上を経てようやく見えてきたこの作品の一つの目的は、キャラクターたちの救済でした。
原作は、ほとんどのキャラクターが非業の末路を辿ります。
生き残っても、拭いきれない罪や後悔、大きな傷を心身ともに背負って生きていく。その苦味もひっくるめて強かに生きていく明日を祈る。そんなキャラクターばかりなのですが、
『STARGAZE』は、道中こそ、下手すると原作以上の苦しみを抱えていたとしても、生き延びた先に希望を見出していくのです。

わたしも、SNS上のファンたちも、途中から毎話「みんな生きてる…」と口にしていました。
生きているだけでなく、その表情が日に日に明るくなっていくのです。
でも、本当は見てみたかったのだと、夢見ていいのだと、実際に見せてくれたのが『STARGAZE』でした。
キャスティングが全員はまり役!
これだけ外れがない、どころか、全員が全員「この人しかいない」と納得させられるキャスティングで揃えられた作品というのも、なかなか無いのではないでしょうか。
途中、声優さんの交代が余儀なくされたザジ役とナイブズ役も、元の配役があまりにもピッタリすぎたために不安の声はありましたが、実際に登場してみたら「ああ、この声で間違いない」と納得させられる演技を見せてくれました。
声質だけでなく、演技も最初から最後まで一部の隙も無く、全員が素晴らしい演技で臨んでくださり、ファンとしては感謝しかありません。
不満があるとすれば、これほどの名キャスティングなのに2クールしか味わえなかったことでしょうか。
欲を言えば、この声で原作順守のシナリオと演技も見てみたかった、と思わせられるほど素晴らしかったです。
最後に明かされた双子とレム、テスラの秘密
様々な改変のなかでも、『STARGAZE』でだんだん違和感を重ねていったのが、ラスボスであるヴァッシュの実兄ナイブズでした。
原作でも他者を寄せ付けない人でしたが、それはあくまでも人間に対してのみ。
「同胞」と呼ぶプラントたちには、むしろ分け隔ての無い仲間意識と深い共感を持つ人物だったのですが、
『STARGAZE』ではどうも、一方的で、プラント側の意思を尊重していないように思え「解釈が違い過ぎる」「ナイブズの人物像が変わったら、『TRIGUN』ではない」という拒否反応も現れていました。

その理由が判明したのが、最後の第11話と、第12話。
ヴァッシュを傷つけぬために、と、ナイブズ一人だけで抱え続けた、レムの秘密とテスラとの約束。
それらが判明した途端、視聴者たちはナイブズの150年越しの孤独と痛みに涙を禁じ得ませんでした。
確かに、原作とは違う。それでも、彼なりに命を懸けて弟と同胞を思い続けた、孤高の愛は、根本的なところに原作のナイブズとも共通するものが感じられました。
最後にようやく歩み寄れた二人は、あまりにも淋しくて、優しくて、美しかったです。
『TRIGUN STARGAZE』のまとめ

『TRIGUN STARGAZE』は、『TRIGUN STAMPEDE』と共通しながらも細かなところが違う、パラレルワールドな続編でした。
『STAMPEDE』とは違う点も多く戸惑いもありましたが、その目的がわかったときのカタルシスは、他では味わえない格別なものでした。
やはり、思い切った改変が多く、賛否両論は別れましたが、
最後までクオリティを落とさずに、できるだけの人々を救おうとがむしゃらに走り切った製作陣に感謝を捧げます。
素晴らしい作品をありがとうございました。
……でも、扱いきれなかった設定が勿体ないので、映画やゲーム化等で解消されることを期待しています。

