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【映画】8番出口が炎上?津波描写は事前警告が必要か?騒動まとめ

8番出口』は、原作はゲームアプリですが、2025年8月、まさかの映画化を果たし注目を集めています。

最初は「特にストーリーの無い脱出ゲームをどう映画化するのか?」と言う意味で、多くの人が期待を抱き映画館へ足を運び、評判も良かったのですが、

SNSで、鑑賞後の人たちが「リアルな津波描写があるから、これから見る人は気をつけて」と注意喚起を促したことで、事態は一転。

「どんな『異変』があるのか分からないから面白いのに、その内容をネタバレするな」と憤る人もいれば、

「津波描写は多くの人がPTSDで苦しんでいるのに、事前に注意喚起が無いのがおかしい」と製作側を批判する人もおり、炎上騒ぎとなってしまいました。

何故津波描写は注意喚起を求められるのでしょうか。

作品の描写に対する注意喚起ネタバレは違うのでしょうか。

ここでは映画『8番出口』の津波描写にまつわる炎上騒動をまとめます。

目次
 

映画『8番出口』を見た人たちによる警告

2025年8月29日(金)から公開された映画『8番出口』。

しかし、この映画公開直後から、実際に見た人たちによる自発的な『津波描写への注意喚起』コメントがSNS上に溢れました。

映画が終わった後「津波……」というつぶやきがあちらこちらから聞こえ、映画の内容以前に、津波描写のショックで重たい空気になってしまった劇場もあった、(東北地方に近いところは特に)というポストもありました。

津波描写をセンシティブに扱い始めたきっかけ

エンタメ作品だけでなく、ドキュメンタリーニュースなどでも、津波描写が入るときには事前に警告が入るようになっていることをご存じでしょうか。

津波描写にこれだけ過敏とも言えるような対応が世間的に知られるようになったきっかけは、3.11——2011年3月11日に起きた東日本大震災です。

この時に起きた津波は、最大遡上高40.1mにも達する巨大津波でした。

東北地方だけでなく、関東地方の太平洋沿岸部も壊滅的な被害を受け、北海道地方の沿岸部にも到達し、

国外でもハワイ諸島、インドネシア、アメリカ西海岸にも及び、各地に大きな被害を与えました。

この震災による死者・行方不明者は22,325人、建築物の全壊・半壊は合わせて406,038戸。

これらの被害のほとんどが津波によるものと言われており、2025年5月1日時点でも未だ避難者が27,037人もいるという、今も被害が継続している災害です。

この時に問題になったのは、直接的な震災被害だけではありませんでした。

映画すら霞むような本物の津波映像はあまりにもセンセーショナルで、新聞やテレビ、動画配信チャンネルなどで連日連夜、繰り返し使われました。

未曽有の大災害に、マスコミを中心に国民全員がショックを受け、感覚がマヒしていたのかもしれません。

Clker-Free-Vector-ImagesによるPixabayからの画像

やがて問題視されるようになったのが、直接的な被害に遭っていない人たちのPTSDやうつ状態などの精神疾患の報告が異常に増えたことでした。

震災とは全く無関係、被害に遭った知り合いも全くいない人ですら、映像だけで心を病み、PTSD等の精神疾患を患い苦しむ、ということが知れ渡ったのです。

それならば、自分自身が被害に遭ったり、知り合いや友人知人、親せきや家族が被害に遭った人はどうでしょうか?

聞くまでも無いことです。

それ以降、マスコミは津波の映像を流すことを止め、少しでも震災を想起させるような描写には事前の注意喚起を徹底するようになりました。

映像だけで人の心を病ませられるということは、それで追い詰めたら最悪の事態を引き起こすことも十分にあり得るということです。

いえ、公になっていないだけで、映像のせいでそうなった人もいるかもしれません。

そういう想像が「大げさ」と笑い飛ばせない時代が、ほんの14年前にあったことは事実です。

 

映画『8番出口』公式からの注意喚起

映画『8番出口』公式からは、映画公開から3日後に以下のような注意喚起がされました。

公開から3日で注意喚起がなされたことに、ひとまず安どの空気も流れましたが、

初動3日の興行収入が重要視される傾向から、あえてそのタイミングを外してから注意喚起をしたのではないか、と勘繰る人も少なくありません。

 

映画『8番出口』の津波描写に警告が求められる理由

映画『8番出口』の津波描写に警告が求められる理由は、さまざまあります。

原作ゲームの津波描写はどうだった?

まず先に強く主張したいのは、原作ゲームはホラーゲームではないということです。

公式では「ウォーキングシミュレーターゲームソフト」とジャンル付けしており、まず怖い描写が有るかどうかすらわからないようになっています。

そのため、起こる異変も、絶妙にホラーとまでは言えないものばかり。

ホラー映画を観に来ておいて配慮を求めるな」という意見も散見されますが、公式がホラーものとして区分していない時点でこの主張はズレています。

ホラー寄りの異変も、「おじさんの顔がバグる」「ポスターが不気味になっている(微笑んでいるような表情の人の薄暗いドアップ)」「天井や点字ブロックに顔が浮かび上がっている」「ドアのすき間から誰かがのぞいている」など「(急に気づくから)ギョッとするけれど、ホラーと呼ぶほどではない」ものばかり。(もちろん、苦手な人は充分怖いでしょうが)

その絶妙な塩梅が上手かったことが『8番出口』を世代問わず魅了した一番の特徴なのではないか、と私は考えていました。

本当のホラー要素が売りのホラーゲームだったとしたら、何十周も周回できる人は限られてしまい、すぐに廃れてしまったでしょう。

しかし、ギョッとはするけれど多くの人は「あー、びっくりした」ですむ程度の怖さだからこそ、気が付くと何十周も飽きずに挑戦し、精神的に追い詰められていくのです。

ですから、原作ゲームを知っていて映画を観に行った人は、原作ゲーム程度か、それが実写になってより真に迫った映像になるだろう、程度の覚悟で行ったはずです。

だからこそ、多くの批判が上がりました。

原作ゲームを知っていればなおさら予想できない類の、注意喚起が必要な描写があまりにも多く、それぞれがリアル過ぎたために、「事前に警告しておくべきだ」という批判が多く上がりました。

警告が求められるものは津波だけではない

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

PTSDを刺激する可能性がある内容について事前に警告することをトリガーアラート」「トリガーワーニング等と言います。

最近は、演劇作品を中心にトリガーアラートの有無を提示している作品が増えてきました。

トリガーアラートで警告される項目は、以下のようなものがあります。

  • 大きな音・声
  • 騒音・雑音(単純な音量の大きさとは区別します)
  • 泣く演技
  • 言い合い
  • 怒る・怒られる
  • 叱る・叱られる
  • 殴り合い
  • 殺す・殺される
  • 自死
  • 激しい動き
  • 飲食・匂い
  • 照明の点滅
  • 暗転
  • 物が飛んでくる
  • 煙が出る
  • 役者が客席に来る・近づく
  • 映像が出る
  • 床や壁が動く
  • 差別
  • 恋愛
  • 暴力
  • いじめ
  • 誹謗中傷
  • ホラー
  • 性描写
  • 災害
  • 家族問題
  • ストーカー
  • 流血
  • グロテスク
  • 痛み
  • 嘔吐
  • 流産
  • 動物や子どもへの加害
  • 摂食障害

私がザッと調べた範囲では、以上の36項目ほどが見当たりました。

一つ一つ書き出すと、随分と多く感じますね。

いわゆる「年齢区分(レーティング)」の対象となるものはまだ理解を得られやすいかもしれませんが、それ以外のものは、正直「そこまで配慮しなきゃいけないの?」と思う人も多いかもしれません。

警告はネタバレか否か?

paulrackoによるPixabayからの画像

それに、映画などで津波が使われる場合、その多くはホラー要素では無くパニック要素として扱われます。

パニック作品の多くは、どんなパニック作品なのか大々的にアピールし、苦手な人は回避して好きな人が食いついてくれるように宣伝するのがセオリーです。

例えば、ゾンビものやサメ映画で、最初にそれを晒していない作品は無いでしょう。

だから、宣伝自体が注意喚起になるので、荒れなくなっています。

『8番出口』は津波がメインでは無いから宣伝に出すことは控えたかったのかもしれませんが、そうだとしても別の形で注意喚起をしても、メインさえしっかりしているのならば、映画そのものの面白さが損なわれることは無かったのではないでしょうか。

ちなみに、上記した「トリガーアラート」ですが、多くのサイトがいきなりネタバレはせず「気になる方は次のページをご覧ください」「気になる方は項目クリックで詳細が確認できますなどのワンクッションを置くことでネタバレ防止にも配慮しています。

21世紀のネット技術でその程度のワンクッションを置けないようなサイト運営をしている映画などまず考えられないと思うので、トリガーアラートの際はそれらのワンクッションを置けば問題無いのではないでしょうか。

映画館や劇場は、もっとも「逃げられない」エンタメ

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

何故、演劇世界でいち早くトリガーアラートが取り入れられたのかを考えるとき、まず考慮しなければいけないのは「劇場(映画館含む)は、最も逃げ場のないエンタメ」であるということです。

本やゲーム、自宅や携帯端末で鑑賞するものは自分の都合で調節したり、止めたり、鑑賞自体やめることも簡単にできますが、劇場作品は自分のペースで調節することができません

もちろん非常口はありますし、途中退席は不可能か可能かでいえば可能ではあります。

しかし、実際、突然PTSDを起こし体調を崩したとき、自力で退室できる人は少ないはずです。

身体がすくみ、身動きが取れなくなる人が多いでしょう。

自力で退室するにしても、狭い道を他の観客に気を使いながら通り、完全に退室するまでにはどうしても数分かかります

その数分の間にも、それらの刺激に晒され続けなければならないのです。

中には、逃げる判断も間に合わず、その場で嘔吐失神してしまい、他の人に救助される人もいるそうです。

「トリガーアラート」が必要とされ始めたのは、ただのお気持ちではありません。

実際に体調を崩す人、安心して鑑賞できない人が一定以上いたためにできた取り組みです。

何も多額の金額がかかるわけでも、大きな手間がかかるわけでもありません。

事前警告さえすれば済む話であり、その警告もネタバレに配慮して行うことが可能なので、特に今回のように多くの人にショックを与える可能性の大きい描写が、リアルな描写で長時間続くような場合は、積極的にトリガーアラートを取り入れてほしいと願います。

映画『8番出口』炎上のまとめ

映画『8番出口』は、内容こそ評価が高いものの、原作ゲームとは違った過激な表現、リアルな描写、真に迫る演技が長時間に渡り続くため、「事前に警告すべきだ」と炎上してしまいました。

正直、わたしも配慮が必要だったのではないかと考えます。

トリガーアラートを取り入れるべきか、どれほど詳細に警告すべきかは意見が分かれるかもしれませんが、「気になる方は次のページへ」など、詳細情報に入る前にワンクッション置くだけでネタバレへの配慮もできるため、逃げ場がない映画は特にトリガーアラートを積極的に取り入れてほしいと考えます。

製作側も観客も安心して、観たい人に届く取り組みが広がることを願います。

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