『運命の巻戻士』シライ救出編は、単行本第4巻第15話「短針中文化祭」~第5巻第21話「命懸け潜入任務(ミッション)」と6話に及ぶ話です。
YouTubeの公式チャンネルでは、『ストーリー編 第四章EP1~7』として紹介され、イッキ見動画も作られています。
「シライ救出編」と呼ばれる通り、巻戻士の中でも一番と称される強さを持つシライが中学生の頃にタイムスリップし、シライ殺害を企てるクロックハンズの魔の手からシライを救出する話。
『運命の巻戻士』は、ただでさえタイムリープを繰り返すややこしさのある作品ですが、
記憶操作をされたり、意外な人物がクロックハンズだったり、敵であるクロックハンズの背景が語られたりと、敵の能力も話の内容も複雑になってくる話です。
一気にSFらしさが色濃くなるので、SF好きはここから『運命の巻戻士』を好きになった人もいるのではないでしょうか。
しかし、SFらしさとは、一筋縄ではいかない複雑さと表裏一体。
実はこの話から分からないところが増えた、という人も多いでしょう。
ここでは『運命の巻戻士』シライ救出編を整理し、徹底解説!
複雑さとSFらしさが増していく『運命の巻戻士』シライ救出編の魅力を改めて味わう手助けをしたいと思います!
『運命の巻戻士』シライ救出編のネタバレ解説です。
単行本4~5巻を読んでいない方はお気を付けください!
『運命の巻戻士』シライ救出編の解説
「シライ救出編」を複雑にしている理由の一つに、今回の敵であるクロックハンズ“11時”の能力が厄介であることが上げられます。
先にネタバレしてしまいますが、今回の敵“11時”の能力は”削除(デリート)”と“編集(エディット)”。
“削除”は人の記憶を消し、“編集”は好きなように作った記憶を植え付けることができます。
この“編集”が曲者で、使い方次第で恐怖症や過食症のような極端な精神状態に陥らせることもできるし、
何らかのプロフェッショナルの記憶を植え付ければ、その能力を体現させることもできるのです。
そのため、シライ救出編は最初から、クロノたちの設定自体が弄られており、まるで『学園ものif編』のように話が展開しました。
2087年 本部壊滅
今回の事の起こりは、クロノとレモンがユキを助ける『レモン編』が終わり本部に帰ったところまでさかのぼります。
任務を終え、本部に転送された二人とスマホンは、なぜか3年前に壊滅している本部でアカバと再会します。
スマホンが調べると、クロノ、レモン、アカバが任務で不在の間に歴史が変わっていました。
シライは中学三年の文化祭の日に転落死。最強の巻戻士であるシライの存在が無くなったために、巻戻士は弱体化し、巻戻士本部は3年前に壊滅していたのです。
クロノたちはシライを救出するべく、シライが死んだ2038年に行きます。
1~8回目 巻戻士の記憶を失くし、ただの中学生として過ごすクロノたち
クロノたちが到着したのは、2038年10月28日AM9:30の短針中学校。
しかし、そこで三人の目の前にバイクで現れたのは、クロックハンズ“11時”。
“11時”はさっそく“削除”と“編集”で、クロノ、アカバ、レモンの三人に偽の記憶を植え付けます。
その記憶は、自分たちが「短針中学校に通う生徒で、シライと同じ剣道部」であるというもの。
クロノには「妹のトキネが生きており、来年短針中に入学する」、レモンには「人間であり、両親もおり、女子に人気で、クラスメイトのミユキと一番仲がいい」など、それぞれに(都合の良い)具体的な記憶も付加されているという用意周到さ。
ちなみに、レモンがユキを助けた時代は、今回の3年前である2035年。
もしもユキが救出された当時小学4年生だとすると年齢の計算が合うので、このミユキとユキは同一人物である可能性もあります。
3人は、最初の8回をすっかり騙されたまま、唯々諾々(いいだくだく)と消費してしまいます。
しかし、8回目、シライの死をきっかけに、その後の展開を全て覚えていることにクロノは気づきます。
それどころか、前日までの記憶はなく、自分の家の住所に行ってもそこは空き地。
自分が本当は巻戻士で、シライの死を回避するために来たのに、嘘の記憶に翻弄されていたことに気づき、クロノはリトライします。
9~91回目
リトライした先でも、すぐに“11時”の能力に寄り記憶の書き換えがされ、クロノは自身を中学生だと思い込んでしまいます。
しかし、その前にクロノは、なぜかAI機能にロックがかかってただのスマホ機能しか使えない状態のスマホンに細工をしていました。

巻戻士たちが連れるスマホは、リトライしてもデータを引き継げる特殊なスマホです。
まずは、9:30にアラームをかけ、記憶を書き替えられた自分がスマホを見るように誘導します。
アラームのタイトルは「動画を見ろ」。
指定された動画は、8回目のクロノがリトライ直前に録った、9回目のクロノへのメッセージでした。
8回目のクロノが11:30にシライが屋上から転落死することを伝えたため、クロノはなんとかしてシライを屋上に向かわせないよう努力しますが、シライはクロノの眼を掻い潜り屋上に行き、転落死。
シライが転落死すると、その後悔とショックからか、クロノは記憶が戻ります。
そのため、9回目からはスマホのメモ機能に、試しても失敗してしまった作戦を全てメモ。
リトライ91回目には、失敗例を参考に、シライはどうしても屋上に行くため屋上についていくことが最適だと割り出し、クリアルートに繋がりそうな手順を次のように探り出しました。
⓪ 「大量のいちごミルク」「大量の風船」「ボクシンググローブ」を揃える。
① シライ先輩にいちごミルクをわたす。⇒シライ先輩とはぐれることを防ぐ。
② 大量の風船で飛べ。⇒マイ先生が連れて来る男の子を泣き止ます間にシライを見失うため、男の子を驚かせ泣き止ませる。
③ アカバをなぐれ。そのあと、考えつく限りの悪口をぶつけろ!⇒学生をカツアゲする不良高校生と戦っていたらシライを見失うため、マジギレアカバに一発で倒してもらう。
④ マイ先生に“人混みかきわけ機”を借りる。⇒劇を見終わった客でいっぱいの廊下で、悲鳴を聞きつけ屋上に向かうシライを追いかける。
しかし、メモに書いてあったのはここまで。その先は今回初めてやるルートです。

屋上には、竹刀を構えるシライに銃を突きつける“11時”。
シライは、“11時”から「クロノ・アカバ・レモンをわたしの仲間がとらえた。あの3人を殺されたくなければ武装解除して飛び降りなさい。」と脅され、動けなくなっていました。
クロノから全員の無事を確認したシライは反撃に出ますが、ふいをついた“11時”がクロノを突き落とします。
シライはクロノを助ける代わりに、犠牲になりました。
クロノは、シライと“11時”の会話から、“11時”がこの学校にいる人物であることに気づき、作戦変更。
シライが殺される前に“11時”の正体を破り、捕まえることにします。
92回目~126回目
91回目終盤、シライに助けられたときに吹っ飛ばされた衝撃でスマホンのロックが解除されたため、スマホン復活!
92回目以降はスマホンがトキネの写真を見せ、巻戻士になった理由を伝えることでクロノの記憶を取り戻すことが可能になりました。
ここからは、400人以上いる中学校内の人物の中から“11時”をあぶり出すことになります。
- シライの知り合い
- 身長170㎝以上
という特徴から、候補は次の3人に絞られました。
- マイ先生
- イトダ先輩
- ホシ先輩
11:00~11:30までの間に屋上に行く人物が“11時”だと辺りをつけ、該当時刻に一人ずつ尾行しますが、全員が屋上に行かないうちにシライは転落死。作戦は失敗します。

95回目からは「クロックハンズあぶり出し作戦」に変更。
AM11:15、クロノは家庭科室で火事を起こし、本来の避難場所である体育館には鍵を閉め、校内の人間全員を校庭へ避難。
学校の人物である以上出て来ざるを得ず、一般人に囲まれている中では派手に動くこともできない状況でシライを狙ってくる人物を特定しようとしたのですが、“11時”はそんな中でもクロノたちの眼を掻い潜りシライを仕留め、速やかに人込みに紛れてしまいます。
126回目。またクロノは家事騒ぎを起こします。
何度も繰り返される代わり映えのしない「クロックハンズあぶり出し作戦」に飽き飽きしながら“11時”はいつも通り非難しますが、校庭に来たのは自分とクロノだけ。
実は、今回だけクロノは体育館の鍵を閉めなかったため、30回も校庭へ避難した記憶のある“11時”以外は全員、本来の避難場所である体育館に避難していたのでした。
つまり、今までの惰性で校庭に来てしまった人物が“11時”

“11時”の正体は、マイ先生でした。
正体を現したマイは、クロノを狙撃。クロノは意識を失う前にリトライし、一命をとりとめます。
127~457回目 改造人間大運動会
リトライ成功で一命をとりとめたクロノは、アカバとレモンの記憶を取り戻し、マイのタイムマシンを壊すことでシライの命を救う作戦をたてます。
しかし、127回目以降は、正体がバレた“11時”マイ=ラッセルハートが開き直り、生徒たち400人を「巻戻士を殺したい」という記憶だけを持たせた改造人間軍団に変え、クロノたちを襲わせてきました。
その上、アカバには“とにかく空腹な記憶”を、レモンには“とにかく改造人間が怖い記憶”を植え付けたため、アカバは常に物を食べている可食状態で肥満化して自慢のスピードが出ず、レモンは改造人間に溢れた現状を過剰に恐れパニックに陥り、普段の冷静さが無くなっていました。
”編集”が余程強くかかっているのか、二人にシライやユキの写真を見せて説得しても過食と恐怖が強くなるばかり。それどころか、一般人以上の足手まといになってしまった二人と同行しなければいけません。

クロノ、シライ、アカバ、レモンの4人は、剣道場から校舎に入り、図書室を通って体育館のマイの元へ向かわなければなりませんが、道中全てが改造人間たちでいっぱいです。
剣道場はシライ一人の剣術で切り抜けることが出来ましたが、食べ過ぎと動きすぎによる腹痛で倒れたアカバをクロノが、恐怖心ですくみあがったレモンをシライが抱えての逃走劇は、図書室で手間取り、図書室を脱出できたのは457回目にしてようやくのこと。
しかも、ラストステージである体育館に集められた改造人間100人は、それぞれがあらゆる戦闘のプロフェッショナルの記憶を植え付けられた“達人改造人間軍団”。
そのうえ、いわゆる『レモン編』と呼ばれる雪山での激闘(リトライ280回)のダメージが残ったままシライ救出を457回も繰り返したクロノは、アカバとレモンを守りながらの脱出劇で体力切れを起こし、リトライできなくなっていました。

勝利を確信したマイは、アカバとレモンに「クロノを殺したい」という記憶を“編集”します。
シライは100人の“達人改造人間軍団”に阻まれ、クロノはアカバとレモンに襲われ万事休すと思われたその時、マイの手に会ったタイムマシンに突進したのは、スマホン。
スマホンがぶつかった衝撃で、タイムマシンは停止しましたが、ほんの一秒で復活。
しかし、その一秒でアカバとレモンは覚醒。
レモンがすぐに開眼“停止”を使う中、アカバも開眼“早送り”で“達人改造人間軍団”を撃退。
“停止”が解け“再生”されたときには、クロノ、アカバ、レモンの攻撃がマイのタイムマシンに迫っていました。
457~625回目 ”究極編集””神殺し”
しかし、クロノたちの攻撃はマイの背中から出た機械によって阻まれます。
”究極編集(ファイナルカット)””神殺し(ディーサイド)”は、4本のアームそれぞれに「侍の武芸者 宮本武蔵」「西部の武芸者 ビリー・ザ・キッド」「カンフーの達人 レッド・クー」「ロンドンの武芸者 ジャック・ザ・リッパー」の記憶を“編集”し、それぞれが自分の意思で動きます。
本来の肉体を超えた動きができるだけでなく、マイの”前回の記憶”を共有しているため動きも毎回変化。

しかし、クロノたちはそれを逆手に取ることにしました。
531回目からは、リトライするたびに同じ攻撃を繰り返します。
そして、625回目、急に動きを変えることでアームを混乱させ、その瞬間に各々の必殺技を叩きこみ、AM11:30、ついに“神殺し”を倒しました。
喜んだのもつかの間、マイが突然倒れ、死んでしまいます。
アームと記憶を共有するため脳を接続していたマイは、度重なる戦闘で脳に負荷がかかり続け、2時間で限界が来てしまったのです。
クロノたちはマイを助けるため625回目を繰り返すことにします。
625回目(626~1181回目(マイ556回死亡))

クロノたちは疲弊が重なり、ついに誰もリトライできなくなってしまいます。
満身創痍の4人は逃げ出し、AM11:09、追いかけてきたマイと屋上で最後の闘いを繰り広げます。
しかし、なぜか4人は“神殺し”の動きを全て予知していました。
“神殺し”はマイと記憶を共有しているため、動きが予想されるはずがありません。マイが違和感を覚えたAM11:10、アームが振り上げた刀に、雷が落ちます。
その瞬間、クロノがマイをアームから引きはがし、救出。アームは雷で燃えてしまいました。
クロノは、AM9:30~AM11:30の2時間の戦闘で限界が来るマイを救うために、AM11:10に屋上に落ちる雷を利用してアームを壊し、その瞬間にマイをアームから切り離して救出したのです。
こうして、シライもマイも両方救出。晴れて任務完了。
クロノたちはシライに、“2084年8月18日”にクロックハンズが巻戻士本部を襲撃することを伝えると、その襲撃される日時に転送されていきました。
2084年8月18日 巻戻士本部襲撃

時間はPM9:07~08頃。クロックハンズに襲撃される巻戻士本部へクロノ、アカバ、レモン、スマホンは駆けつけますが、シライたちの活躍で難なく撃退。
クロノたちは元の2087年に戻り、マイは時空殺人未遂の罪で逮捕。巻戻士本部の留置場に収監され、この件はようやく解決しました。
『運命の巻戻士』シライ救出編のまとめ

『運命の巻戻士』シライ救出編を解説しましたが、いかがだったでしょうか。
”11時”マイは、タイムマシンによる能力“削除”“編集”だけでも厄介なのに、本人がハッカーとしても天才的であり、メカニックでもあるために能力を機械にも応用してくるため、前回のシンプルな爆弾魔と比べると、急にレベルの跳ね上がった強敵でした。
それだけでなく、クロックハンズ側の背景に迫ったり、シライが実は中学時代からクロノたちと再会する日を待ち望んでいたことがわかったりと、話に深みも増してきましたね。
今後、チャイヌが登場する『スパイ任務(ミッション)編』も解説していきますが、ここからは複数巻にまたがる話になってくるため、記事も複数に分けていきます。
どうぞ、お楽しみに!

