『運命の巻戻士』∞編、今回は“4時”の最強の能力“無限夢”を打破した背景を説明します。
実は、グレイが‟CASE88”に参加した歴史は今回が初めて。今までの歴史ではクロノとハイザキの二人だけが“CASE88”に参加してきました。
そのため、グレイがいなかった歴史と、今回の歴史でグレイが参加することになった背景を説明することになります。
SFらしい、時間軸が複雑な説明になってきます。理解できなくてもストーリー自体は追えるので、難しい場合は思い切って読み飛ばしても大丈夫です!(と、スマホンも言っています。本当に)
この記事は『運命の巻戻士』∞編のネタバレ解説です。
単行本第7~12巻を読破してからご覧になってください!
『運命の巻戻士』∞編の徹底解説(10)
前回、“無限夢”から急に姿を消したと思ったら、現実の世界から“無限夢”を壊してクロノとハイザキを救出したグレイ。
いったい何が起こったのか? それを知るためには、グレイが参加した今回の一つ前の歴史を説明しなければいけません。

一つ前の歴史〈グレイがいなかった歴史〉
実は、今回の前の時代(今回の“5時”が‟4時”、“6時”が“5時”だった時代)までは、“CASE88”に参加してきた巻戻士はクロノとハイザキの二人だけ。グレイはその中にいませんでした。
二人だけで乗員を救出し、ループする廊下も攻略しますが、やはりハイザキはギンを殺し、“4時”“5時”“6時”と闘い、“無限夢”に囚われ、“無の世界”での888年に閉じ込められ、ちょうど1年経過したころクロノは一度は絶望しますが、トキネの促しにもう一度奮起し、ハイザキに新たな作戦を説明します。
前回の記事の最後では、夢の世界の外からグレイが壊したため二人の作戦はうやむやになりましたが、その作戦とはこうです。

無の世界に移動するときに大きな“∞”マークが出現したとき、クロノはとっさにハイザキの目を塞ぎました。
つまり、ハイザキだけは“∞”マークを十分な時間見ていないため、しっかり見てしまったクロノよりもかなり早く目が覚めるはずなのです。
気力が残っている内に現実に戻ることさえできれば、スマホンも動いており本部への転送もできます。
そこで、ハイザキが現実に戻ったらすかさずスマホンに本部へ転送してもらい、新しい巻戻士に「花火を見るな」と伝えてハイザキと交代してもらいます。
なぜなら、そもそも“無限夢”に囚われてしまった原因が、おそらく“∞”型の花火を見てしまったことだからです。
それさえ見なければ、新しい巻戻士たちはキンスケの“無限夢”を回避してキンスケのタイムマシンを壊すことができる、というのです。
しかし、いくらクロノより時間が短いとはいえ、ハイザキも一度は“∞”マークを見てしまったため、現実に戻る頃には憔悴(しょうすい)しているでしょうから、現実に戻ったら条件反射で行動できるよう、二人はとにかく「花火を見るな」という伝言をひたすら唱え、頭に刻みつけました。
そして、“無の世界”での体感332年後。ハイザキは現実世界での0.3786秒後に戻ってきました。

ハイザキは考えるよりも先に、スマホンに「僕を本部に転送しろ」と指示します。スマホンは驚きながらも転送しようとしますが、キンスケが投げた棒で破壊されてしまい、転送は不十分に行われてしまいました。
ハイザキがたどり着いたのは、2062年のルカイ島。
ハイザキは、332年もの無の世界での生活に、不十分な転送によるショック。もしかしたら、“CASE88”でのあまりにも大きな心の負担の影響もあるのか、髪は真っ白になり、記憶喪失になってしまいました。
髪が白いことから、ルカイ島では「シロ」と呼ばれ、記憶喪失のまま9年も過ごすことになります。
シロとレイの出会い

2071年。23歳になったシロは、少しだけ思い出したことがありました。
それは、『巻戻士』という仕事をしていたということ。
その話を友人たちにしても、やはり信じてはもらえませんでしたが、面白い話のネタとして人々の間に伝わっていき、ある人が都市伝説の動画としてネットに上げたのです。

その動画が、クロノに助けてもらってからずっと『巻戻士クロノ』を探し続けていたレイ(9歳)の目に留まりました。
レイがクロノに助けられた2070年。当時8歳だったレイは、自宅に戻ってから自分が遭難していた事、助けてくれたクロノは病院でいなくなってしまったこと、クロノが何者なのか手がかりが無いことを知り、ショックを受けていました。
金に物を言わせてクロノを探すよう言いつけますが、何の進展もなかったある日、都市伝説として語られた『巻戻士』の動画を見て、世界中の探偵に『巻戻士』の調査を依頼したところ、元巻戻士を名乗るシロにたどり着いたのです。
動画がアップされた一カ月後。シロの家を探し当てたレイは、シロが姿を現した瞬間、思わず「クロノ?」と声をかけてしまいます。

それを聞いたハイザキは、突然、クロノとの記憶が雪崩のように湧き上がり、思わずレイの肩を掴んで「“花火を見るな”!!」と叫んでいました。
「少しだけ…思い出した…!! あの人は「クロノさん」…!!」「「クロノさんは“CASE88”で死ぬ」…!!」「それを止めるためにこの伝言を誰かに伝えたかったんだ…!!」「”花火を見るな”!!」
号泣しながら興奮してまくし立てたシロにドン引きしたレイでしたが、気を取り直してシロにクロノのことを尋ねてみたものの、わかったことは、クロノが巻戻士で、恐らく自分はクロノに命懸けで助けてもらったのだということだけでした。
それでも、当時、クロノがふらついていた理由、クロノとスマホンの「1278回」という言葉の意味等、今になってようやく理解できたレイも思わず涙します。

しかし、シロの言葉の中にあった「「クロノさんは“CASE88”で死ぬ」…!!」という言葉を聞きとがめます。
シロも思い出せたのは、クロノが“CASE88”で死ぬという事と、それを救うために”花火を見るな”という伝言を伝えた巻戻士を“CASE88”に送り込む使命があったということだけ。
それも、転送の失敗で意図せぬ時代と場所に飛ばされてしまったシロには、秘密組織である巻戻士を探し出す術がありません。
しかし、レイは、シロがレイに巻戻士になれるよう特訓を施し、現役の巻戻士を探し出し、レイを巻戻士に入れてもらえばいいと言い出します。
ほとんど何も覚えていないシロは断ろうとしますが、レイの意志は固く、仕方なくシロは10年かけて特訓しようと告げると、レイは5年で終わらせてとさらに無茶を言うのでした。
それからレイは毎日ルカイ島へ通い、シロの特訓を受けたり、巻戻士に出逢う方法を考えたりする日々を送り、使用人たちには「男と会っているらしいぞ。」「まあグレてるわね!」と陰口を叩かれても意に介さず邁進し続けました。

そして、5年後。レイはトーキョーで任務中の巻戻士を見つけ、無理やり自分の力を見せつけて入隊試験を受けられることになったとシロに伝えに来ました。
本当にたったの5年で目標を達成してしまったレイに、シロは「レイ、クロノさんを頼んだよ。」とほほ笑み、レイも「まかせて、シロ!! 絶対助けるから!!」と強気に返します。
その翌日、「レイへ おれはやくめをはたした クロノさんをたのむ たのしかったよ ありがとう シロ」という手紙を置いて、シロは姿を消しました。シロは、グレイがクロノを助けたら、クロノを助けられなかった時代の自分が消えることがわかっていたのです。
レイは試験を合格し、巻戻士に入隊するときに、使用人たちに「グレた」と言われていたこととかけて「グレイ」と名を変えました。
クロノは、自分が助けた少女「レイ」だと知ったら無茶させないだろうと考えたからです。

そうして“CASE88”に参加したグレイですが、実はシロとの“花火を見るな”の特訓のおかげで、“無限夢”の花火を反射的に見ていませんでした。(しかし、“無限夢”に囚われてはいるので、少しは見てしまったのかもしれません)
そして、“無の世界”で1年経った頃、クロノがハイザキに“花火を見るな”という伝言を伝えるのを聞いたときに、ハイザキがシロと同一人物であったことに気づきます。
シロから聞いていた情報をようやくすべて理解したグレイは、PM7時48分0.0004秒の現実へ一足早く戻り、つなぎ目は眠らされている本人たちにあると予測し、クロノとハイザキを吹き飛ばしたおかげで、“無限夢”を打破して二人を現実に引き戻すことができました。
『運命の巻戻士』∞編の徹底解説(10)のまとめ

もはや手詰まりかと思えた最強の技“無限夢”を打破するために、クロノとハイザキが時空を超えて繋いだ希望がグレイでした。
ややこしい種明かしではありましたが、SFらしい展開と、記憶を失くしてもクロノを助けるために自分の存在をかけてグレイを育てたシロの存在に胸が熱くなった人は多かったでしょう。
次回でようやく、長かった‟∞”編の解説終了です!
このややこしくこじれた“∞”編がどう納まるのか、ご期待ください!

