鬼舞辻 無惨(きぶつじむざん)は、鬼滅の刃の鬼の始祖にして最強のラスボスです。
他の鬼は基本的に日輪刀と呼ばれる特殊な刀で首を切られると死ぬのに対し、無惨だけは首の切断に耐性があり、太陽の光以外では倒せないとされています。
傷の回復も毒の分解も他の鬼たちとは比べ物にならないほど早く、圧倒的な強さを持ち、何より生きることへの執着がすさまじく、しつこい。
炭治郎たちは最後の最後まで苦しめられました。
こんな強敵鬼舞辻無惨の最後はどうなったのでしょう。
ラストの結末は丸く収まったのでしょうか。
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鬼舞辻無惨を倒した方法は?
文句なしに作中最強の鬼、鬼舞辻無惨。
その無惨の最終形態をおさらいしましょう。
鬼舞辻無惨の最終形態
無惨の能力
●細い管・背中九本(長さ四メートル)
速い、細くて軌道が読みにくい。
●細い管・太もも、各四本ずつ計八本(長さ七メートル)
背中の管よりも速い。背中の管と違い
体に引っ込んだり出たりする。死角から攻撃する。
●両腕(九十センチ~十メートルくらい)
伸び縮みが著しく、決まった形と長さではない為
攻撃が読みにくい。距離も詰めづらい。
不規則に多数ある口からの吸息は近くにあるものを
引き寄せて広範囲を抉り取る。
吸息の大きさもその瞬間ごとに変わる。
『鬼滅の刃』第22巻 p132
これに加え『切ったそばから治癒するため切断に至らない」ほどの速すぎる回復能力。
他の鬼(特に鳴女)が見聞きするものを共有できる感覚共有。
変幻自在なのは姿かたちだけでなく臓器にまで及び、心臓が七つ、脳が五つあり、それを移動させることまでできます。
刀で殺そうとしたらこれら全てを同時に攻撃せねばならず、しかも自らを複数の肉塊に分裂して四散させ逃げ出すことまでできます。
太陽の光に晒そうにも、鬼舞辻は無限城と呼ばれる異空間におり、その無限城がどこにあるのか、どうすれば入れるのかもわかりません。
産屋敷耀哉の戦略
そこで鬼殺隊の頭目・産屋敷 耀哉(うぶやしき かがや)は一計を案じました。
最強の肉体を持ち太陽以外で殺すことができない無惨を倒す為の夜明けまでの戦略
産屋敷耀哉が揺さぶり、先制攻撃。
珠世の薬を使う隙を作る。
↓
珠世の薬で弱体化。
↓
無惨、四種の薬の分析・分解に力を使う。
薬の効力で動きが鈍る。隊士の攻撃が有効になる。
↓
隊士たちが太陽の光の当たる場所に足止め、
猛攻により薬の分解に集中されない。
鳴女の存在、能力についても、
これまで得た情報(鬼の出現の仕方の不自然さ)などから
産屋敷耀哉が分析、愈史郎が最も対戦相手として
適しているとも判断していた。
「鬼滅の刃」第23巻 p26
しかしこの戦略、作中では一晩の出来事ですが、16巻第136話終盤~23巻(最終巻)第199話までかかる、大変気の長い作戦でした。
産屋敷耀哉の先制攻撃
鬼舞辻が産屋敷家の居場所を探っていること、耀哉の命を狙っていることはわかっていたため、あえて産屋敷家の居場所を悟らせ鬼舞辻を耀哉の元におびき寄せ、爆破。
鬼舞辻の再生を一秒でも遅らせるため、爆薬には細かいマキビシのようなものも含まれ殺傷力を上げてありました。
この「一秒でも稼げ」という思いの連鎖が、やがて確実に無惨を追いつめていきます。
その間に柱を初め鬼殺隊員全員に緊急招集、無惨による産屋敷襲撃が知らされます。
珠世の薬を吸収
爆破とマキビシによるケガを再生しかけた頃に、鬼舞辻の周りに多数の肉の種子が発生。
この肉の種子は浅草で鬼化させられた男性の血鬼術によるものです。
その種子からウニのように全方向に棘が生え、その棘が刺さった肉の中でも無数に枝分かれし、無惨をその場に固定。
これを吸収してその場を逃れようと判断した瞬間、珠世の拳が無惨の身体を貫きます。
珠世としのぶの共同開発による薬が握られたその拳を、無惨は棘とともに吸収してしまいます。
吸収した当初は「鬼を人間に戻す薬」としか語られていませんでしたが、実はこの薬は4種類ありました。
- 鬼を人間に戻す
- 老化(一分で五十年)
- 分裂阻害
- 細胞破壊
最初の『鬼を人間に戻す薬』がやがて分解されるだろうことを見越し、それが分解されたら残りの3薬の効果を逆に高める仕組みとなっていました。
柱たちによる攻撃→無限城へ
無惨が珠世に気を取られているところを、岩柱・悲鳴嶼(ひめじま)の攻撃が入ります。
他の柱たちは産屋敷自身がおとりとなることを承知しないだろう、という理由で産屋敷は悲鳴嶼にだけこの作戦を伝え、爆発の届かない場所で待機しているよう指示していました。
そこに他の柱たちも続々と集結。炭治郎もそこに加わったところで、無惨は逃げ込むために異空間・無限城を展開。
鬼殺隊全員を無限城に招き入れる形となったのです。
無限城対策
無限城の中は上弦の鬼だけでなく、下弦程度の力をもたされた無数の鬼たちでひしめいていました。
鳴女の血鬼術で部屋を、道を、上下左右を、出鱈目なパズルのように次々組み替えたりワープしたりできる無限城で、他の鬼たちに隊士たちを足止めさせながら、
無惨は肉の繭に閉じこもり、人間に戻る薬を分解します。
珠世を取り込みながら。
しかし、産屋敷はこの出鱈目パズル無限城対策もしていました。
無限城対策の肝は、愈史郎(ゆしろう)の血鬼術。
目の文様が書かれた呪符を貼り付けた者たちで視覚を共有できるため、これをまず鴉たちと作戦の総指揮を取る耀哉の一人息子・輝利哉(きりや)、娘・くいなとかなたに使わせることで戦況を把握、輝利哉たち三人で絶えず図面を引きながら的確な指示を出せるようにしました。
この呪符は万能で、貼り付けることで敵から身を隠すこともでき、目をつぶされた味方が他の味方と視覚を共有することもできたため、終盤までかなり活躍します。
呪符だけでなく愈史郎自身も、珠世の命で隊員の救護及び援護をして、最後まで共闘してくれました。
無惨復活→愈史郎激昂
肉の繭に閉じこもり『鬼を人間に戻す薬』の分解を終えた無惨は、21巻第180話で復活します。
復活した無惨は駆け付けた隊員たちを次々と虐殺、糧として力をつけます。
それを見せつけてから、わざと残しておいた珠世にとどめを刺します。
呪符を通してそれを見た愈史郎は激昂。
鳴女の視覚を操り、脳内に侵入して無惨の支配を外して頭も乗っ取り、柱や鬼殺隊員たちが死んだと偽った視覚を無惨に流す裏で逆に集結させました。
無惨は鳴女を通して愈史郎を吸収しようとしますが、柱たちの攻撃で集中しきれず、鳴女を殺します。
無限城を操る鳴女が死んだことで、無惨も鬼殺隊員たちも全員が突如地上に排出されました。
このとき、夜明けまで一時間半。
長い長い持久戦の幕開けです。
無惨の血と珠世の血清
無惨は攻撃に自身の血を混ぜていることを告げます。
鬼にはならない致死量の猛毒で、細胞を破壊し死に至らしめるという恐ろしいものです。
持久戦開幕直後に炭治郎が右目に受けてしまい、戦闘不能に陥ります。
その後、柱たちも、後から駆け付ける伊之助たちも、無惨のすべての攻撃を避けることは到底かなわず血をくらってしまいますが、珠世の猫・茶々丸が細胞破壊を止める血清を投与。
無惨の血の毒を克服します。
この時に取り込んだ珠世の細胞の記憶を読み、ようやく無惨は薬が一つでは無かったこと、急激な老化により自分の運動能力が徐々に下がり、弱体化していっていることに気づきます。
刀身を赫く
炭治郎が鬼殺隊に入った頃から噂されていた赫刀ですが、実は条件を満たすことで誰でも刀身を赫くすることができることに蛇柱・伊黒(いぐろ)が気づきます。
その条件に気づいたきっかけは、上限の鬼との戦いで先に命を散らした仲間たちのお影でした。
縁壱のつけた傷
継国縁壱(つぐくによりいち)とは、赫刀を操り、すべての呼吸の始まりである『日の呼吸』の使い手であり、そもそも鬼殺隊員たちが操る特殊な『呼吸』そのものを編み出し皆に広めた人です。
物語も佳境に入り、柱や一部の素質ある鬼殺隊員たちが次々と目覚める『痣』や『透明な世界』を生まれつきそなえていた人でもあります。
おそらく歴代鬼殺隊員一の強さを誇り、唯一無惨に傷をつけた人物でもあります。
傷…どころか首を含め複数個所を切り刻み、赤い刀であったため再生もできず無惨を窮地に立たせましたが、無惨は肉体を1800の肉片に弾けさせて逃亡。
縁壱はそれも1500までは仕留めますが、残り300は逃してしまいました。
―――と、人間離れなんてものではない人物であることがよくわかるエピソードで、縁壱が無惨と対峙したのはこの時一度だけではあるのですが、この話はそれでは終わりません。
この傷が、何百年とたった炭治郎たちの最終決戦で蘇るのです。
他の鬼と比べ物にならない再生スピードを持つ無惨の肉体に残っていたのです。この傷が。
おそらく普通の戦闘であればこの傷も蘇りはしなかったのでしょうが、珠世としのぶの作った4つの薬による弱体化で、表面上は消えたように見えていた傷が浮き上がってきたのです。
何百年もの間密かに無惨の細胞を灼き続けたその傷はそのまま脆い所、無惨の弱点となりました。
無惨逃亡、亡き隊員たちの刀
鬼滅の刃 蛇柱 伊黒小芭内 イラスト pic.twitter.com/ui5lR7dLgU
— アカツキ【鬼滅の刃イラスト】 (@kimetsuAKATSUKI) July 4, 2022
夜明けまで後40分というところで、無惨は逃亡をはかります。
それを復活した炭治郎と蛇柱・伊黒(いぐろ)が追いかけます。
周りに広がる隊員たちの亡骸を迷わず蹴散らしていく無惨に、炭治郎は彼らの日輪刀を拾って次々と投げつけ足止めしました。
炭治郎が亡き隊員の刀で無惨を攻撃するのはこれが初めてでは無く、名も顔も出ない隊員一人ひとりの命を尊重し、決して無駄にするまいという炭治郎の覚悟と作者の信念が伺える描写です。
残り二つの薬
窮地に陥った無惨は、縁壱の時と同じく分裂して逃げようとしますが、何故かできません。
これが珠世としのぶの三つ目の薬『分裂阻害』の効力。
さらにそこに畳みかけるのが四つ目の薬『細胞破壊』。
内から外から、無惨の犠牲になってきた人間たちの繋いできた一秒一秒が無惨を確実に追いつめていきます。
血気術による神経系への攻撃
夜明けまで25分のところで、無惨は謎の衝撃波を出します。
これは相手の神経系を狂わせるもので、炭治郎たちはけいれん発作が止まらなくなり、その余波は遠く離れた輝利哉たちにまで届いてしまいます。
けいれん発作は、呼吸ができなくなるため脳に酸素が届かず体中の機能に弊害が出てしまい、長時間収まらなければ後遺症が残ったり死に至ることすらある、とても恐ろしい症状です。
どこまでもどこまでもしぶとい無惨ですが、「血鬼術なら日輪刀が効くのでは」と炭治郎は自身の身体に刀を刺して克服。
皆で次々と技を繰り出し続け、炭治郎も最後の力を振り絞って無惨を壁ごと日輪刀で貫き、そこに縫い付けたところをさらに柱たちが畳みかけます。
夜明け
皆が待ち焦がれた夜明けがついに訪れました。
が、無惨はそれでももがきます。
少しでも焼ける時間を伸ばそうと、炭治郎ごと『肉の鎧』で全身を覆い(見た目は赤ん坊のように膨らんでいます)、悲鳴を上げながら這いずり回ります。
それを輝利哉の支持の元、他の隊員たちが壁の崩れた建物から本棚を落とし、車で突っ込み、電車で押しつぶし、「退(さ)がるな!!何があっても 柱はもう戦えない!!」と声を掛け合いながら踏ん張ります。
逃げ場がないと知るや土に潜ろうとするのを、満身創痍の柱たちが削り、取りこまれた炭治郎の日輪刀が赫く染まり、
ついに動けなくなった無惨は日の光の前に塵と化したのです。
とどめを刺したのは、作戦通り太陽の光でした。
しかし、その塵の跡に残った炭治郎もまた、呼吸と脈が止まっていました。
鬼舞辻無惨の最後の結末について
しかし、これでも終わらない。
終わらないのです。この男、鬼舞辻無惨は。
肉体が消滅する直前、最後の力を振り絞って、肉の鎧に取り込んだ炭治郎に自分の血と力、想いのすべてを託しました。
死にかけた炭治郎は鬼として蘇り、暴れまわります。
今回の作戦の間に、無惨と同じ『鬼を人間に戻す薬』で人間に戻った禰豆子が駆け付けますが、
その禰豆子すらわからず、肩を噛みます。
もう皆、戦う力もロクに残っておらず、泣きながら声をかけ続け、禰豆子は肩を噛まれてもなお炭治郎にしがみつき続けます。
そこに現れたのはカナヲでした。
しのぶが作った鬼を人間に戻す薬を託されていたのです。
カナヲの薬の投与で攻撃が止まり、ここからは精神世界で無惨との心理戦に入ります。
無惨は次々と炭治郎の心を折ろうと言葉を尽くしますが、それらはどこか的外れで上滑りしています。
心から人間の可能性を信じ続ける炭治郎と、己が欲のために皆を見下し踏みつけにしてきた無惨とでは根本的に相いれなかったのでしょう。
最終的に、「待ってくれ」「私の意志を思いを継いでくれ」とすがる無惨には見向きもせず、背中を押してくれる亡き仲間たちの腕と、藤の花の向こうから引き上げてくれる禰豆子たちの腕に導かれて、炭治郎は戻っていくのでした。
まとめ
「なんで主人公ではなく太陽にとどめを刺させたんだ」「無惨戦が一番地味」などの声も聴きますが、おそらくこの『鬼滅の刃』という作品はそういう英雄譚ではないのだろうと思います。
例えば『浅草で鬼化させられた人』のように名前も出ていない人たち。
例えば顔もロクに出ていない、戦闘要員ですらない隠の人たち、刀鍛冶の里の人たち、藤の家紋の人たち。
そんな一人ひとりの想いや行動すら決して無駄にはならず、すべてが繫がり、やがて大きな力となりうる。
『誰一人として取りこぼさない物語』それが鬼滅の刃だったのではないでしょうか。
鬼殺隊員としてはまだひよっこで、才能だって父親ほどではない炭治郎が主人公であることも、
一人ひとりの力は小さくても、人と人とのつながり、歴史の積み重ねが、圧倒的な理不尽に立ち向かう刃となる。
そういうことを表現したかったからなのではないか、と私は感じています。